弁護士登録をして25年になります。
たくさんの相談者・依頼者に出会ってきました。皆様、それぞれに大きな困難に直面して弁護士に相談し、事件の解決を目指して、依頼をします。
しかし、弁護士が代理人活動を行い、法的解決がなされただけで、依頼者の抱えるすべての苦痛が解消するわけではありません。
法律は、社会全体の秩序を維持するための最大公約数的なルールを取り決めているに過ぎず、個々人のさまざまな条件から生じる精神的苦痛をすべて取り除くような万能性を兼ね揃えておりません。
したがって、「泣き寝入りですね。」という言葉を何度となく、相談者に投げかけられる私ども弁護士の精神的な苦痛も多大なものです。
人が何らかの困難に直面して大きな苦痛を抱えた時、法律という道具を使って物事の解決を図りながら、解決に至る道のりの中で、生きる力や悩む力を身に着けていくことは何より大事なことです。
「生きる力」や「悩む力」が必要なのは、今の時代だからではなく、いつの時代も同様であったと思います。
法的な紛争という大きな課題を突き付けられ、改めて自分を振り返るチャンスを与えられるのだと考えています。
二人の子供を育てながら、弁護士業を続けることは大変な労苦を伴いましたが、人が生きていく上で避けては通れない道のりをしっかり歩いてきたことは、私の生きる力・悩む力だけでなく弁護士としての力も育ててくれたと信じています。
人として弁護士として、出会う人々がしっかり生きるためのお手伝いができればと願います。